法律上で借地権と呼ばれる権利には、物権(注1)である地上権と、債権(注2)である賃借権の2種類があります。どちらも建物の所有を目的として他人の土地を利用する権利ですが、前者と後者とでは権利の強弱に著しい違いがあります。
- 地上権:
- 土地を直接的に支配できる強い権利を持ちます。この権利の所有者は、地主の承諾を得ることなく、地上権を登記し、第三者に譲渡し、賃貸することができます。地主には法的に登記の協力義務があり、借地権者が希望すれば地上権の登記に応じなければなりません。
- 賃借権:
- 賃貸人の承諾を得て土地を間接的に支配する権利です。地上権と比較して権利は弱く、賃借権を登記する場合には地主の承諾が必要であり、第三者への譲渡、賃貸にも地主の承諾が必要です。賃借権には、地上権のように地主に登記の協力義務はありません。しかし、借地権者が所有する建物の登記をすることによって、賃借権を登記したのと同様の効果を得ることができます。
現在、借地権というと、地上権が設定されている物件はほとんどなく、賃借権が一般的です。賃借権は確かに地上権と比較すると弱い権利ですが、借地借家法及び旧借地法で強力に保護されていますので、実質的な価値は地上権と変わらないとも言われています。
- (注1)
- 物権とは、人が物を直接的に支配できる権利です。占有権、所有権、地上権、永小作権、地役権、入会権(いりあいけん)、留置権、先取特権、質権、抵当権の10種類あります。鉱業権、採掘権、漁業権、入漁権などのように、民法以外の法律で認められた物権もあります。
- (注2)
- 債権とは、財産権の一つです。債権者が債務者に対して、一定の給付を請求することを内容とする権利です。金銭を貸した者が借り手に対して、その返還を請求する権利などをいいます。