地代が払われていれば、一見問題はなさそうに思われますが、実は貸地の管理上大きな問題を残すことになります。
以前、貸地上の建物に相続が発生し、名義人は従前のままとなっている状態で、借地権を誰が引き継ぐか係争し、地代が時々滞納するという状況を繰り返しながら長期化していきました。建物は老朽化して、近隣から苦情がはいるようになっていました。そこで借地人の代表者と云われる方と話し合いをし、建物を解体撤去して土地を返還してもらうことの合意に至り、書面を作成して建物の解体にかかりました。ところが誰かの入れ知恵なのか、解体は中止され、隣接のパチンコ店が借地権付建物を購入して換金所等として使用したいと言いだし、裁判所を介して非訟事件(名義変更、条件変更建築申立)を起こすこととなりました。地主とすれば従前の借地人と建物収去土地明渡しに合意していることから、当然勝訴すると考えていました。しかし、相続人の中の一人の署名捺印がこの合意書から漏れていました。裁判所は相続人全員の合意を得られていない明け渡しの合意は有効ではないと判断し、結果的に地主は介入権を行使して高い価格で借地権を買い取ることとなりました。
地代の値上げ等についても借地人一人がなした行為が有効かどうか法律上に明確な判断基準がないことから、その都度事情によって争うことになりそうです。このように、借地人等の間でトラブルとなったときに管理上の問題となる可能性があります。したがって、借地人に相続が発生したら、出来るだけ早期に建物名義の登記を含めて名義変更の手続きをしてもらうようお願いして下さい。